macOS Serverの終了
突然の終了
Apple社から長らく提供されてきたmacOS Serverが、2022年4月22日(日本時間)にリリースされたバージョン5.12.2の更新内容で突如としてアプリそのものが終了することが判明しました。
以下は弊社の把握している範囲での状況と今後の影響です。(内容を保証するものではありません。)
macOS Serverとは何か
macOS Serverは1999年にMac OS X Serverという名称で発売された、最初は当時のMac OS Xと独立した製品でした。
2011年のOS X Lion 10.7に対応したLion Server 10.7からはApp Storeで提供される有償アプリとなりました。
2018年3月のmacOS Server 5.6のリリースに合わせて、2018年秋にDNS、DHCP、メールサーバー、メーリングリスト機能、Webサーバー、カレンダーサーバーなどの様々なサービスを廃止するという予告が出ました。
2018年9月にリリースされたmacOS Server 5.7.1では、実際に以下のサービスを残して他のサービスのサポートを削除しました。
- Open Directory
- プロファイルマネージャ
- Xsan
さらに、2021年12月のmacOS Server 5.12からはXsanのGUIが削除されています。
Open Directory
Open DirectoryはAppleが実装したLDAPディレクトリサービスで、プラグイン機能で様々なサービスにも対応しています。
また、認証やサービスや名前解決のフレームワークも提供します。
プロファイルマネージャ
プロファイルマネージャはmacOS上で単独で動作する一種のMDM(Mobile Device Management)の機能を提供するサービスです。
Apple School ManagerやApple Business Managerと連携してApple製品を幅広くサポートします。
- Mac
- iPhone
- iPad
Automated Device Enrollment(旧DEP: Device Enrollment Program)による初期設定も含めてサポートしています。
終了後の状況
2022年4月22日からの状況です。
- Apple Storeで検索してもmacOS Serverは表示されないため新規の購入はできません。
- 既に購入済みの場合はダウンロードやバージョン5.12.2への更新は可能です。
- プロファイルマネージャにサインインすると警告を表示します。
終了したサービスの取り扱い
macOS Serverでサポートを取り止めたサービスは、必ずしも完全になくなってしまったわけではありません。概ね、以下のような状態に分類できます。
- macOS本体に基本的な機能が移行したサービス: ファイル共有やコンテンツキャッシュ
- GUIがなくなってコマンドの利用は可能なサービス: DHCPやDNS
- GUIがなくなって若干の修正作業で利用は可能なサービス: Webサーバー
- 完全に利用できなくなったサービス: オープンソースのソフトウェアなどのインストールが必要
英文になりますが、Apple社はmacOS Server Service Migration Guideというドキュメントを用意しています。
Apple社の推奨
Apple社はmacOS Serverの終了に対しては、最初の方で触れたサポート文書: HT208312の冒頭で他社のMDMソリューションへの移行を勧めているように、この文書を書いている時点では読み取れます。
同文書で参照しているのはAppleプラットフォーム導入に含まれるWebページですが、一般的なMDMの選択について記述されています。(本文書を作成している時点では、日本語版のAppleプラットフォーム導入には翻訳されていないページも参照しています。)
終了の与える影響
macOS Serverの終了が与える影響です。
macOS Monteryより新しいMacのサポート
macOS Monteryより新しいmacOSは2022年9月以降にリリースされると考えられますが、この新しいバージョンで動作するmacOS Serverアプリは存在しないことになります。(通常、新しいメジャーバージョンのmacOSがリリースには新しいバージョンのmacOS Serverアプリが必要で、従来のバージョンは動作しなくなりました。)
これにより、以下のような影響が考えられます。
- macOS Serverアプリを使用しているMacをmacOS Monteryより新しいリリースに更新できません。
- macOS Serverで管理する対象のMacをmacOS Monteryより新しいリリースに更新すると、新しいmacOSの機能に対応できない可能性があります。
- macOS Monteryより新しいリリースが出た後のMacは、新しいmacOSしか動作しません。
- macOS Serverアプリを使用しているMacを、新しいmacOSしか動作しない新しいMacにリプレースできません。
- 新しいmacOSしか動作しないMacは管理不可能とはならないと考えられますが、2.の問題を抱えることになります。
MDMを利用する枠組み自体はmacOSやiOS/iPadOSが備えている機能です。Apple社がプロファイルマネージャから他社のMDMへの移行を推奨している以上、このMDMを支える枠組みが新しいリリースのOSから、いきなり廃止されたり、まったく異なる枠組みに変えられたり、といったことはないと考えられます。
このため現行のmacOS Serverで新しいOSの機能を十分にサポートはできないものの、少なくとも当面の間は管理できると考えられます。
iOS/iPadOS 16以降のサポート
2022年9月以降にリリースされると考えられるiOS/iPadOS 16にも、同様状況になると考えられます。
iOS/iPadOS 16以降の新しい機能への対応ができません。
MDMの費用の問題
プロファイルマネージャを含んだmacOS Serverは有償のアプリでしたが、一度購入すればそれ以上の費用は掛かりませんでした。
しかし、他社のMDMに移行する場合は月々の固定費が新たに発生することになりますし、利用する台数に応じた料金の場合がほとんどですので、適切な予算を見込む必要があります。
他社MDMがサポートする機種の問題
プロファイルマネージャで管理する対象がiPhone/iPadだけの場合は、後継とするMDMのサービスの選択の幅は比較的広いと言えます。
一方、プロファイルマネージャでMacを管理している場合は以下が課題になると考えられます。
- Macに管理配布でアプリをインストールするといった機能への対応
- Macだけ管理をしたいといった場合に費用的に見合うプラン
今回のApple社のmacOS Serverの終了を契機にリーズナブルな費用のMDMのプランが、特に教育機関向けにリリースされることを期待したいところです。